このドクターに恋してる
 失礼な物言いをされたが、自分でも自分のどこに魅力があるのかわからないので、うんうんと同意した。
 兄と話している間に客が帰っていき、ドアの表に閉店の札をかけた母が近付いてくる。

「陽菜の魅力はいっぱいあるわよ。まず、私に似て美人でしょ? それに私に似て優しいでしょー」

 指折って私の魅力な点というより、自分に似ている点をあげていく母を見て、兄が噴き出した。

「陽菜は母さん似だけど、母さんほど自分に自信があるヤツじゃないよ」
「何を言ってるの。お母さんほど謙虚な人はいないでしょ」
「どこがだよ」

 兄の突っ込みに母は大笑いして、私の横に腰を下ろした。

「お母さんはどちらが息子になっても歓迎するわよ」
「息子? ちょっとー、気が早すぎるよ」

 私はにこやかに言う母の肩を押した。プロポーズをされたのではない。話が飛びすぎだ。
 母は「そう?」と首を傾げる。

「先生たちにしても、陽菜にしても、結婚してもいい年頃じゃないの?」

 兄が腕を組んで、うんうんと頷く。

「俺もどっちが家族になっても快く迎えるぞ。美結も大喜びしそうだしな」
「ちょっと、お兄ちゃんまで何を言うのよ。私、真剣に悩んでいるんだからね」
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