このドクターに恋してる
 希子さんは食べながら、私の悩みに対しての返事を考えているようだった。
 その間、私はメインのチキンカツを静かに食べ、希子さんがなにかを言ってくれるのを待った。
 希子さんはときどき私と目が合うと、微妙な笑みを浮かべた。
 適当な答えが見つからないのかもしれない。希子さんまで悩ませてしまうことに申し訳なってきた。
 やはり自分のことなのだから、自分で解決しないといけないのだ。

「希子さん、ごめんなさい」

 全部食べ終えて、私は希子さんに声を掛けた。
 希子さんは最後のご飯を口に入れて、「ん?」と不思議そうな顔をする。

「アドバイスしにくいことを話してしまって」
「いいのよ、そんなこと気にしないで。話してもらえて嬉しいんだから。そうねー、宇部先生に誘われたとき、信じられないと喜んでいたわよね?」

 面倒だと思わず、ちゃんと向き合ってくれる希子さんだから、つい頼ってしまう。
 私は嫌そうにしない希子さんに安堵して「はい」と頷いた。

「でも……郁巳先生から誘われたときも信じられなかったです」
「そうよね。私も信じられないと思ったもの。それにしても二人とも陽菜を選ぶとは、見る目があるのねー」
「えっ、見る目あります?」
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