このドクターに恋してる
 希子さんが見る方向に私も顔を向ける。すると、そこには私の悩みの原因となっている二人がいた。
 あの二人が揃うとより絵になるなー……じゃない!

「あわわわっ」
「ちょっ、陽菜?」

 私は思わず、希子さんの陰に隠れた。どちらとどうしたらいいのかわからないという贅沢な悩みを持つ身としては、今は顔を合わせにくかった。
 しかし、私よりも細身の希子さんに隠れるのは無理があったようだ。
 
「あ、西田さんと……それ、隠れているつもりなのかな?」

 近付く足音とともに宇部先生の優しい声が聞こえ、私はそっと顔を出した。隠れているのがバレては無視できない。

「どうも、お疲れさまです」
 
 気まずそうにする私に宇部先生は微笑む。

「お疲れさま。二人はご飯食べたの?」
「今、食べてきました」
「そう。午後も頑張ってね」
「はい、先生たちも頑張ってください」

 立ち止まって話をする私たちの横を女性のスタッフ数人がチラチラと見ながら通り過ぎていった。
 その視線を気にする私に気遣って、宇部先生は当たり障りのない話題を振ってくれたようだ。私もプライベートに関わるようなことは言わないようにした。
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