このドクターに恋してる
 美結に疑問を投げかけられ、私は少し考えてから三歳の子にわかりやすく話した。

「見ているだけで、幸せな気分になれるってことかな」
「しあわせぇ? うれしいってことぉ?」
「そうそう。みーゆはこの子が好きだよね? 会えたとき、嬉しかったでしょ?」

 私は美結が点滴していないほうの手で抱いているぬいぐるみを触った。去年のクリスマスにテーマパークでこの着ぐるみと写真を撮ったと喜んでいて、自慢げに見せてくれた。

「うん、うれしかった!」
「そういう嬉しい気持ちになれる存在ってことなんだよ。わかった?」
「うん、わかった!」

 美結は大人の会話に入れると、とても楽しそうにする。今も満足そうにして「おわるかな」と終わりそうになっている点滴を眺めた。
 点滴が終われば、腕がらくに動かせるので今かまだかと待っていると美久さんが話してくれる。
 私はまた明日も来ることを約束して、帰路についた。

 病院の敷地から出ようしていると、職員用駐車場から一台の白いセダンが出てきた。何の気なしにハンドルを握る人の顔を見る。
 あ、郁巳先生だ。
 薄暗い中でも整った顔立ちがはっきりと見えた。初めて見る車を運転している姿は、かっこよすぎた。今日はイケメン医師の二人を見られて、よい日だ。
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