このドクターに恋してる
 小さくなっていく車を見つめて、私は胸に手を当てた。本当に興奮して、眠れそうにない。どうしよう……。

 翌日、入院手続きをする人の対応を終えた私は欠伸をした。手で口を隠してはいたが、希子さんにバレてしまう。

「珍しく眠そうじゃない?」
「昨日、嬉しいことがあってなかなか寝付けなかったですよ」
「どんな嬉しいことよ? あとで聞かせて」
「了解でーす」

 昼休憩時間になり、希子さんと院内のカフェに向かって廊下を歩いて行く。
 すると、前方から宇部先生と郁巳先生が向かってきた。希子さんが私の肘を小突く。

「ほら、挨拶するのよ」
「……はい」

 まず先に希子さんが「お疲れさまです」と言う。私もそれにならって会釈をした。

「お疲れさまです」
「お疲れさま……おっ、陽菜ちゃん」

 宇部先生が私の名前を呼び、足を止めた。希子さんと郁巳先生が「えっ?」と揃って、驚いた声を出す。
 私は心の中で「ええー!」と叫んでいた。まさかこんなところで名前を呼ばれるとは……。
 希子さんが私の腕を揺する。

「ちょっと、どういうこと? 何で陽菜ちゃんって呼ばれているの?」
「あの、その、実は……」
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