このドクターに恋してる
 一日の業務を終えて、希子さんと職員出入り口へと歩きながらあちらこちらに首を動かした。
 同じように帰ろうとしている看護師しか見えなく、ため息が漏れる。

「会えなかったです」
「どうする? このまま帰るの?」
「今どんな状態なのかわからないので、帰るしかないです」
「そっか、明日に賭けよう」

 希子さんは私の肩をポンと叩いて元気付けてくれた。
 やはりこれから外科まで行ってしまおうかと考えたが、行ったとしても忙しくしているときで迷惑になるかもしれない。
 明日こそ会えることを願って、今日はおとなしく帰ろう。

 しかし、翌日も会えなかった。
 会えないことがもどかしくなる。

「今日も会えませんでした」

 落胆する私の肩に希子さんが手をのせた。

「宇部先生に連絡先を教えてもらうのがいいと思うよ」
「でも……」

 まだ最終手段を使いたくはない。もう一日待とうと決めて、希子さんと外で別れる。とぼとぼと歩き、病院を振り返った。
 郁巳先生、会いたいです!
 彼が今ここにいるかもわからないけど、願う。
 願いは届かず、週末を迎えることになった。
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