このドクターに恋してる
愛しい人
 土曜日の朝、カーテンを開けて晴れ渡る空を見上げた。いい天気だけど、本日の予定は何もない。
 昨日までに気持ちを伝えられていたら、今日はウキウキ気分だっただろうけど……。
 何度もため息をつき、テレビの情報番組を見る。
 そろそろ桜が開花しそうで、女性タレントが関東地方のお花見スポットを紹介していた。
 お花見かー、郁巳先生と行きたいな。
 それにしても暇だ、カフェの手伝いにでも行こうかな。
 オープン準備中で忙しい時間かなと思いながら、母に電話を掛けた。

「今日暇だから手伝いに行こうかと思うんだけど」
『そう? じゃあ私の代わりにお願いしようかな……あら? ちょっと待って』
「えっ、なに? お母さん……」

 通話中のままで待たされるのかと思ったが、切られてしまった。
 待つこと数分、母から折り返し掛かってきて応答する。

「なにかあったの?」
『郁巳先生がね、来たのよ。窓から中を覗く顔が見えて、オープンしていないけどお通ししようとしたの。そしたらね、陽菜がいないかと聞いてきてね。だから、そこを教えたわ』
「そこって、どこ?」
『陽菜の部屋に決まっているじゃないの。そろそろ着く頃だと思うわよ。それにしても今日もかっこよくてね、話ながら照れてしまったわ』
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