このドクターに恋してる
 どうしてお母さんが照れるのよと突っ込もうとしたとき、インターホンが鳴った。
 まさか……もう?

「お母さん、誰か来たみたい。郁巳先生かも」
『はい、はい。切るわね』

 スマホを握りしめたままで、インターホンの画面を見る。
 映っているのはずっと会いたいと待ち焦がれていた人だった。

「郁巳先生!」

 ドアを開けるなり、彼の胸に飛び込んだ。

「突然来て……あの、陽菜さん?」

 しがみつく私の肩を彼がおそろおそる掴むのを感じた。そこで我に返る。
 どうしよう、咄嗟に抱きついてしまったけど……。
 ゆっくりと離れて、顔を上に向ける。郁巳先生の瞳は揺れ動いていて、戸惑っている様子だった。

「ご、ごめんなさい。急にこんなことしたら、ビックリしちゃいますよね? 私も自分がしたことにビックリしていて」
「うん、ビックリした」
「ほんとごめんなさい。あの、入ります?」
「お邪魔してもいいのなら」
「もちろん、いいです。どうぞ」

 私の部屋は郁巳先生の部屋から比べたら、かなり狭い。
 彼はそんな部屋を物珍しそうに見渡した。

「あの、そこしか座るところはないんですけど、どうぞ座ってください」
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