このドクターに恋してる
 僅かにすき間を空けると、熱い舌が入ってくる。その舌に自分のそれをそっと触れる。私の舌も同じくらい熱くなっていた。
 彼の手は私の後頭部に回っていて、どちらからともなく舌を絡め合う。

 「い、郁巳先生……」

 熱いキスが終わり、郁巳先生に肩を抱き寄せられた。頭を彼の胸に預け、私は上がっていた息を整える。

「郁巳先生がこの部屋にいるなんて、いまだに信じられないけど、嬉しいです」
「俺もここにいられることが嬉しいよ。そうだ、陽菜さん。先生呼びはやめてもらえないかな?」
「えっ?」

 先生呼びをやめる?
 どう呼んでほしいのだろうか。

「郁巳って、呼び捨てでいいから」
「ちょっと、待ってください! 私のことをさん付けしている人を呼び捨てになんてできないですよ」
「俺も陽菜って呼ぶから」
「そう言われてもすぐに変えるのは難しくて……郁巳、さん……郁巳さんと呼ばせてください」
「んー、仕方ないな。じゃあ、敬語は使わないでね」

 これまた困った要求だ。あれもこれも今ままでと違うようにするのは困難である。
 でも、ずっと敬語でいたら不機嫌になりそうだ。意識して変えていくしかないかな。

「努力します」
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