このドクターに恋してる
 夢の中にいるようなフワフワした気分だったが、どうにかオムライスを作り終えた。
 この部屋のテーブルは小さめのため、料理を二人分を並べると余分なスペースがなくなった。

「お口に合うといいのですけど」
「美味しそうだね。いただきます」

 郁巳さんはまず野菜スープを口に運んだ。
 私も同じように食べながら、郁巳さんの反応を窺う。

「うん、優しい味で美味しい」
「よかった」
「これ、卵がトロっとしていてすごいね」

 郁巳さんはスプーンでオムライスをひと口分取って、口に入れた。
 口を動かす郁巳さんの目が潤んだ。辛くはないはずだけど、コショウが効いていた?
 スプーンを持ったままで動きを止めているから、どうかしたのかと心配になる。

「郁巳さん?」
「あ、ごめん。すごく美味しくて、感動した」
「そ、そんなにも?」
「実はオムライスを食べるのが子どものとき以来でね。昔、母が作ってくれたのもトロトロの卵がのっていたから、懐かしくなって。もうオムライスを食べることはないと思っていたから、なんか感慨深くなったんだ」
「そうだったんですね」

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