このドクターに恋してる
 そういうわけで、私たちは郁巳さんの車で出掛けた。
 私の行きたいところに行こうと言われたので、私がよく利用しているしショッピングモールを選んだ。
 エスカレーターで二階へと進んでいるとき、郁巳さんがポツリと呟く。 

「懐かしい、ここに来るのは大学生以来だよ」
「そうなんですか? 普段はどこで服とか買っているんですか?」
「横浜駅近くのお店だけど」
「ああ、デパートですかー」
「陽菜は行かない?」
「行きますけど、私は化粧品を買うくらいです。あそこの服は高いので見ることもできません」
 
 郁巳さんは「へー」と言いながら辺りを見回していた。

「今日は土曜日だからか、人が多いね」
「そうですね。あんまりうろうろすると疲れますから、サッサと買いましょうか」
「いや、陽菜と買い物するのは楽しそうだから、ゆっくりと見てみたい」

 さりげなく嬉しいことを言ってくれる。
 私も郁巳さんとの買い物を楽しみたい。

「わかりました! じゃあまずはー、あそこの雑貨屋さんから見てもいいですか。使いやすそうな食器があるんですよ」
「うん、行こう」

 私は声を弾ませて、インテリア雑貨店へと郁巳さんの手を引いた。
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