このドクターに恋してる
 店内は女性の客が多く、カップルや夫婦といった男女もちらほらといる。
 私たちもカップルなんだよね……とちょっとだけ実感する。まだ信じられない気持ちはあるけれど。

「これ、かわいいね。陽菜に似合う」

 郁巳さんが手にした薄ピンクのマグカップを私に向けた。
 かわいらしい色が似合うと言われて、なんだか照れくさくなる。

「たしかにかわいいですけど、コーヒーカップはありましたよね?」
「あるけど、新しく陽菜用のを買いたいんだ。俺にはどの色がいいと思う?」
「そうですねー、水色はどうですか?」
「水色か、家にはない色だ」

 郁巳さんにはシックな黒とかグレーが似合いそうではあるが、彼が選んだマグカップと並べるのなら、白か水色がいいと思った。
 白ではありきたりだから、水色を選んだのだ。
 水色が家にはない色だと言うが、ピンクもない色のはずだ。

「この二つ、郁巳さんの部屋には似合わないかもしれませんけど」
「うん、わかるよ。でもこういうあたたかみのある色、嫌いではない」
「あたたかみ……いいですね! じゃあ、これにしましょう。他の食器は白で揃えるのはどうでしょう?」
「いいね。陽菜が作る料理がさらに美味しく見えそうだ」
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