このドクターに恋してる
 宇部先生はすんなりと納得していたが、どう意味かわからない私と希子さんはキョトンとした。
 人事関係者でも直属の上司でもない医師がなぜ私の勤務状況を気にするのだろうか?
 私たちの疑問を察した様子の宇部先生が言葉を続ける。

「郁巳はこの病院の経営に携わっているんだよね。だから、職員のことをよく見ているし、いろいろと気にかけているらしい。そうだよな?」

 宇部先生は同意を求めるように郁巳先生の肩をポンと叩いた。
 郁巳先生は気まずそうな顔をする。

「そんなよくは見ていない。だから、あまり気にしないでほしい」
「ああ、常に監視しているというわけじゃないからね。お二人もそこのとこ、気にしないで大丈夫だよ」

 少し言葉足らずの郁巳先生を宇部先生が弁解するように説明してくれた。たぶん希子さんと私の顔が固まっていたからだろう。
 いつも見られているとなると、迂闊な行動はできないと警戒しそうになっていた。
 希子さんが安堵した息を吐き、顔を緩める。

「わかりました。ちょっとビックリしましたけど、経営にまで関わっているなんて郁巳先生は大変ですね。ね、陽菜」
「そ、そうですね。私のことを知っているとは思わなかったので、ビックリしました」
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