このドクターに恋してる
「陽菜らしい顔になった。予約は俺に任せてくれる?」
「もちろんいいですけど、私よりもずっと忙しいのに大変じゃないですか?」
「陽菜とのことなんだから、全然大変じゃない」

 いつもキリッとしている郁巳さんの顔が緩むのは私の名前を出すときだけだと勝手に思っている。
 どんなことよりも私を優先してくれているような感じがして、私の気分は上がるばかりだった。

「じゃあ、お願いします。楽しみにしてます!」

 素直に受け入れると彼はとても嬉しそうにするのだ。「うん」と口を弓なりにする彼につられて、私もニッコリと笑った。
 私は早速希子さんに報告した。

「今度のお休みに温泉行くことになったんです-」
「誰とか聞かなくてもわかるわ。彼氏となのね」
「もちろん! しかも予約してくれるって言うんですよー」
「ほお、それは楽しみだね。きっと高級なところだろうね」
「高級? 私はどんなところでもいいんですけど」

 どんな宿でもいいというのは本心だった。
 郁巳さんとの初めての旅行なのだから、絶対楽しいと思っていた。
 しかし、希子さんの予想が当たって、私はあんぐりと口を開けることとなる。
 
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