このドクターに恋してる
 ウェルカムドリンクはコーヒーを選ぶ。コーヒーに添えられたマドレーヌを食べて、緊張がほぐれた。
 美味しいものを食べると、どんなときでも自然と笑顔になれる。
 女将さんが直々に部屋へ案内してくれた。

「こちらのお部屋になります。どうぞお入りください」
「ありがとうございます」

 郁巳さんが先に入り、私はあとから靴をのんびり脱いだ。女将さんが靴を下駄箱に入れてくれる。
 荷物も運んでくれるし、至れり尽くせりだなと思いながら室内へと足を進めた。
 
 まず黒いテーブルが置かれたダイニングルームが目に飛び込んできた。
 奥には和室があって、その隣りにベッドルームがある。
 広い和洋室に驚いた私は口をポカンと開けた。女将さんが館内の説明をしてくれたが、まったく頭に入ってこない。
 郁巳さんが真剣に聞いていた。
 女将さんが部屋を出て行き、郁巳さんが私の手を引く。

「陽菜、こっち」
「えっ、なんですか……うわっ、わわわっ、すごい!」

 ベッドルーム奥のドアを開けると、そこには半露天風呂があった。
 しかも源泉かけ流しで、もくもくと湯気が立っている。
 興奮する私の肩に郁巳さんが手を置いた。
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