このドクターに恋してる
 キッパリと言われて私はこの場から逃げたくなり、おそるおそると目の前にいる先生たちの顔色を窺う。気持ち悪いと思われているのではないかと不安になったのだ。
 宇部先生は肩を揺らして、笑った。

「目がハートになるとか、おもしろすぎる。そうか、郁巳のファンでもあるんだね。俺だけじゃなくて残念だなー」

 全然残念そうに見えない口ぶりだ。宇部先生は楽しんでいるだけにしか見えない。
 私は脱力して、素直に白状した。

「私、前から医療ドラマが好きで白衣のかっこいいお医者さんに憧れを抱いていました。身近で理想的なお医者さんを見られるのが嬉しくて、勝手にファンになっていました。すみません……」
「いや、謝らないで。こんな俺たちに好意を持ってもらえるのは、光栄だから。な、郁巳」

 笑顔な宇部先生に対して、郁巳先生は真顔で何も言わない。それに、私に向ける視線が冷たいように感じた。勝手にファンになっていると言われて、気分を害したのかもしれない。
 どうしよう……嫌われてしまった?

 郁巳先生は私と目が合うと、フイッと顔を背けた。避けられてしまったようだ。

「圭介、もう行こう」
「おい、この状況で行くのかよ? ファンの陽菜ちゃんにお礼のひと言くらい……」
「別に何も言うことはない」
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