このドクターに恋してる
 宇部先生はスマホをポケットに戻して、微笑んだ。

「ありがとうございます。でも、まだ具体的には何も決まっていないんです」 

 宇部先生は郁巳さんから聞いているようで、「うん」と頷いた。

「郁巳は結婚まで考えているんだろうなと思っていたから、驚きはしなかったけど、院長のあとを継ぐと言ったのにはビックリしたよ。光一先生にかなり遠慮していたからね。でも、郁巳が院長になるならこの病院は安泰だ」
「そうですね」

 宇部先生と頷きあっていると、「陽菜!」と郁巳さんが白衣をなびかせてこちらに向かってきた。
 まさか郁巳さんが来るとは思わなく、私は目を丸くさせる。
 宇部先生がポンと私の肩を叩いた。

「今、話しなよ。そのほうが安心して帰れるでしょ」
「あ、はい。ありがとうございます」

 宇部先生はスマホをしまう前になにかを打ち込んでいた。
 どうやら郁巳さんに連絡したらしい。
 宇部先生は私たちに手を振って、駐車場へと歩いて行く。
 郁巳さんが私の肩を抱いて、顔を覗き込む。

「郁巳さん、お仕事中ですよね? 大丈夫ですか?」
「ああ、今はちょうど休憩していたところだから。それより、あの人に何もされていない?」
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