このドクターに恋してる
 宇部先生は歩きだした郁巳先生と私たちを交互に見て、困惑していた。

「ごめんね。俺たち、カンファレスの準備があるから」

 宇部先生は顔の前で両手を合わせて、謝罪のポーズをした。
 希子さんが笑顔で答える。

「はい、頑張ってください」
「ありがとう。二人も午後からの仕事、頑張ってね」

 足早に郁巳先生の後ろを追いかける宇部先生を見送って、私と希子さんは顔を見合わせた。

「郁巳先生の気分を害してしまったみたいです」
「ごめん。郁巳先生のファンだとまで言わなければよかったよね」

 しょんぼりする私に希子さんが寄り添う。私は微かに首を横に振った。

「いいんです。希子さんが言わなくても、いつか知られたかもしれないですから」
「でも、陽菜……」
「でも!」
「ん? なに?」

 俯き加減だった私は先生たちが歩いて行った方向に振り返った。すでに二人の姿はないが。

「ただファンでいるのは悪いことではないですよね? ひそかに想うだけなら迷惑にならないと想うんです」
「ん、うん、まあ、私もそう思うよ。もしかして昨日の嬉しいことって、宇部先生に会ったこと?」
「そうなんです。初めて話ができたのが嬉しくて、興奮しちゃって」
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