このドクターに恋してる
「郁巳先生、嫌いな食べ物はないですか?」
「いいですよ、自分で取ります」
「そうですか、宇部先生は……」

 郁巳先生の皿に料理を取うとしたが、断れてしまった。やはり郁巳先生にはどう接していいのかわからない。
 私は右を向く。宇部先生は笑顔で、私に皿を差し出した。

「俺、何でも食べられるから適当に取ってくれる?」
「はい」

 どうしても二人の態度の違いに戸惑ってしまう。宇部先生はここに来たときからニコニコしているが、郁巳先生はムスッとしているように見える。
 機嫌が悪いのではないだろうけど、表情に変化が現れないからなにを考えているのかわからなくて対応に困った。
 郁巳先生にはあまりあれこれと言わないほうがいいのかなと思ったが、乾杯を要求されたから積極的に料理をお取りしようと考えたのだけど……難しいな・・・・・・。
 しかし、病院で大人気の二人の先生に挟まる日が来るとは想像もしていなかった。二人の私服を見るのは初めてで、とても新鮮だ。

 私は揚げ物やサラダを皿に取りながら、宇部先生をチラッと見た。目が合うとニッコリと笑ってくれる宇部先生は、ハイネックのアイボリーのニットに黒いジーンズを穿いている。シンプルな装いなのが柔らかい雰囲気の先生に似合っていて、かっこいい。

「袖、汚れます」
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