このドクターに恋してる
「みーゆ。はい、プレゼントだよ」
「ひなちゃん、ありがと! ママー、あけて-」

 美結は受け取った箱を持って、美久さんに向かう。美結は美久さんが包装紙を取り、箱を開けるのを見て、目を輝かせていた。
 私がプレゼントしたのは、お化粧ごっこが楽しめるヘアメイクセットだ。専用のカバンに入っていて、持ち運びもできる。

「わあ、すごい! やったー」

 美結はカバンを持って、嬉しそうにくるくると回った。全身で嬉しさを表現する姿がとても愛らしくて、微笑ましい。
 左から「かわいいな」と呟く声が耳に届いた。
 宇部先生が言うのならわかるが、郁巳先生が言うのは意外だった。私は驚いて、郁巳先生を凝視する。
 どんな顔でかわいいと言っていたのか見たかったのに、険しい顔になっていた。今聞こえた言葉は、聞き間違いだったのだろうか。

「なにか?」
「いえ、なんでもないです」

 不機嫌そうに問われて、私は肩をすくめた。
 宇部先生が美結を呼んだ。美結はカバンを持ったままでこちらに来た。

「これはね、先生二人からのプレゼントだよ。はい、どうぞ」
「ありがと!」

 大きな声で返事をした美結はカバンを空いている椅子に置いて、プレゼントを受け取った。また美久さんのところに持って行くのかと思いきや、私に向ける。
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