このドクターに恋してる
「ひなちゃん、あけてー」
「わかった。なんだろうねー」
「ねー、なんだろうねー」

 私は美結と一緒にワクワクしながら、箱を開ける。中には、お姫さまになれる水色のドレスが入っていた。

「わー、ドレスだー」
「わー、かわいい!」

 私と美結はほぼ同時に声を張り上げる。私はドレスを広げて、美結の体に当てた。

「ほらみーゆ、お姫さまだ」
「わーい! お姫さまだー。パパー、ママー、見て!」

 美結はドレスを抱えて、兄と美久さんに駆け寄った。兄が美結を膝に抱き、頭を撫でる、

「よかったな。宇部先生と郁巳先生、こんな素敵な物をありがとうございます」
「ありがとうございます」

 兄と美久さんは揃って、頭を下げた。美結は「着てみたい!」と大喜びして、おうちに帰ったら着ようねと美久さんと約束していた。
 宇部先生はあたたかい眼差しで兄家族を見ていた。

「子どもの喜ぶ顔を見るのは、やはり気持ちがいいね」

 私も兄家族を見ながら、頷いた。

「治療が辛いお子さんもいるでしょうけど、宇部先生が優しいからみんな笑顔になれると聞きましたよ」
「そうだといいけど。病気に負けないで頑張ろうとする子どもたちに励まされて、できる限り笑っていようとは思っているけどね」
「先生を慕うお子さんは多いんじゃないでしょうか。美結も短い間で、先生が大好きになっていましたし」 
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