このドクターに恋してる
 宇部先生は優しく言ってくれたが、知らなかったとはいえ触れられたくないことに触れてしまったと私はまた落ち込んだ。

 落ちた気持ちはなかなか上がらなく、美結に怒られる羽目になった。

「もう! ひなちゃん、ちゃんとやってよー」
「ごめん、ごめん。えっと、ここの部分をクルクルしてください」
「わかりましたぁ」

 先生たちが帰り、兄夫婦と片付けをしていると美結に呼ばれた。早速お化粧ごっこをしたいと言われて、私はお客さまの役をしていた。
 片付けは兄たちに任せて美結と遊び始めたのだが、郁巳先生とのことばかりを考えてしまって、ちゃんと遊んでいなかった。
 私がしっかり相手をするようになり、美結はご機嫌になった。小さい手で私の髪をいじり、楽しそうにくるくると巻いている。
 お世辞にもきれいに巻けているとは言えないが、文句を言ってはいけない。

「こうでいいですかぁ?」
「はい、いいでぇす! 満足です」

 美結は笑顔で返す私から離れて、美久さんのところに行った。

「ママー、ひなちゃん、見てー。みゆがやったんだよ」

 美久さんは私を見て、苦笑する。

「すごいねー。いいの、もらったね」
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