このドクターに恋してる
 郁巳先生は頷いて、姿勢を正した。

「CT検査は必要ないと思うけど、心配なら受けることはできます。どうします?」
「私も検査はしなくてもいいかなと思います」
「了解。まず、冷やしましょう。氷のうは準備できていますか?」

 郁巳先生に聞かれ、看護師は「はい」答えた。

「少し横になって、冷やすようにしてください。お大事に」
「はい、ありがとうございます」

 郁巳先生は処置を看護師に任せて、別の患者の診察に行った。
 私は診察ベッドに横たわり、氷のうを当ててもらう。寒くないようにと、毛布をかけてくれた。
 少しすると二人の警察官が来た。私は体を起こそうとしたが、そのままでいいと言われて横になった状態で話をした。
 事故の状況と怪我についての聞き取りだった。対向車がセンターラインをはみ出したのが原因の事故だが、スマホを見ていたのでどんなふうにぶつかってきたのかは全然わからなかった。
 まったく状況把握できていないことを申し訳なく思った。

「すみません、お役に立たなくて……」
「いいえ、特に問題はないですよ。前の方に座っていないと見えないですからね。お大事になさってください」
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