このドクターに恋してる
 優しい警官だった。私は警官が去ってから、目を閉じた。疲れているせいなのか、体がだるくなり、まぶたが重くなってきた。
 浅い眠りの中にいると、近くから宇部先生の声が聞こえた。

「陽菜ちゃん、大丈夫?」
「宇部先生、どうして……」
「起きなくていいよ」

 氷のうを手に持ち、上半身を起こそうとした私は止められた。
 宇部先生はベッドの横に丸椅子を持ってきて、座る。当直明けで休んでいたからなのだろう、宇部先生は私服で白衣も着ていなかった。
 白衣を着ていなくても、やはりかっこいいが。

「バス事故があったと聞いて、時間的に陽菜ちゃんが乗っていたんじゃないかとメッセージを送ったんだけど、返信がないから病院に確認したんだ。それで急いで来たんだ。軽傷だとは聞いたけど、顔を見るまでは安心できなくてね」
「あ、すみません。スマホの電源は切っていて」
「うん、そうだと思ったよ。おでこを打ったんだって? 気分が悪いとかない?」
「ないです。すみません、わざわざ来てもらって」
「俺が来たくて来たんだから、陽菜ちゃんが気にすることはないよ。思ったより元気そうでよかった」
< 50 / 97 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop