このドクターに恋してる
 安心して脱力する宇部先生を前にして、私の目頭は熱くなった。
 こんなにも心配してくれるなんて、こんな状況でも嬉しくなる。
 涙がこぼれ落ちそうになっていると、宇部先生の後ろに郁巳先生が現れた。郁巳先生は宇部先生を見て、顔をしかめる。

「圭介がどうしているんだ? 休みだろ?」
「事故の怪我人に陽菜ちゃんもいると聞いたら、いてもたってもいられなってね。心配で飛んできたんだよ」
「飛んでくるほどなのか? お前、岩見さんのこと……」
「そう、そういうことだよ」
「へー、そう……そうか。岩見さん、ちょっと診ますね」

 二人の「そう」「そう」という会話に何が「そう」なのか、疑問になっていると郁巳先生は宇部先生を押しのけた。
 入れ替わりで椅子に座った郁巳先生が氷のうを外して、私の額を診た。
 
「腫れは引いてきていますね。二、三日でこぶはなくなるでしょう。痛みはもう少し続くかもだけど、徐々にやわらぐと思います。もう帰ってもいいですけど、仕事は休むことをおすすめします。いろいろと疲れたでしょうから」
「そうですね。遅刻するとは伝えていたんですけど、お休みをもらおうと思います」
「俺、あと少しで休憩だから、家まで送りますよ」
 
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