このドクターに恋してる
 それから、挨拶できる日が来るのを心待ちにした。
 しかし、なかなかその日が訪れない。すれ違うどころか、顔さえも見ない日が続いたのだった。忙しい先生たちが受付があるロビーを歩くことはあまりないし、私が病棟に行くこともほとんどない。

 やはり接点がないというか、縁がないということかな・・・・・・と落ち込むある日の夜、六歳上の兄の(たける)から連絡が来る。

美結(みゆ)が入院した』
「えっ、どうして?」
『肺炎』
「風邪引いてるって言ってたもんね。入院するほど、ひどくなっちゃったんだ。私、お見舞いに行くよ。どこの病院?」
『浅葉総合病院』

 まさか自分の勤務先だったとは……。
 兄は四年前に結婚して、三歳の娘がいる。美結はとても明るくて人懐っこい子で、私を慕ってくれていた。その子が病気になって苦しんでいると聞くと、胸が痛む。
 かわいそうに……励ましてあげなくちゃ。

 私は翌日の勤務終了後、小児科病棟に行った。美結の入院している病室は二人部屋だった。
 私が病室に足を踏み入れると、ベッドで点滴を受けている美結の顔がパアッと明るくなる。

「ひなちゃんだ」 

 私はひらひらと手を振った。
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