このドクターに恋してる
気になる人
 翌日、郁巳先生が勤務中の私のところに来た。様子を見にいくと昨日電話で言われていたが、本当に来るのかと半信半疑だった。
 タイミング悪く、私が受付対応中だったので、郁巳先生に少し待っていてもらう。
 次の人の対応を希子さんに替わってもらい、私は郁巳先生と向き合った。

「お待たせしました。すぐに手が離せなくて、すみません」

 頭を下げる私に郁巳先生は軽く手を振った。

「いえ、大丈夫です。外来に顔を出していないようだったから、特に問題はないってことでいいのかなとは思いましたけど、顔を見たかったので」
「えっ、あ……痛みは薄れてきていますので、よくなっていると思います。ですから、あの、こちらまで来ていただかなくてもよかったんですけど」

 顔が見たかったという予想外の言葉を聞き、私は動揺する。
 昨日診察を終えたときに、問題がなければ今後の受診はしなくてもいいと言われていた。
 額の腫れも昨日より小さくなっていた。だから、行く必要はないと判断したのだった。郁巳先生は私が行かなかったのだから大丈夫だろうと判断したようなのに、私の顔が見たかった?
 それは、どういう意味があって?
 郁巳先生の意図を探ろうと顔をジッと見るが、表情に変化はまったく現れていない。
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