このドクターに恋してる
「お昼だよ」
「はーい、閉めますねー」

 希子さんに昼休憩の時間になったことを告げられ、私は午後からの再開時間の案内板を出して、受付を閉めた。
 私と希子さんは一緒に昼食をとるのが当たり前の日常になっていて、週三日は弁当持参と決めている。その弁当を持って、希子さんに尋ねた。
 
「希子さん、郁巳先生ってあんな感じでしたっけ?」
「あんな感じとはどんな感じ?」

 私のわかりにくい質問は、希子さんに聞き返されてしまう。

「謎な感じ?」
「なによ、その言い方。たしかに前から謎というか、ミステリアスな雰囲気はあるよね」
「ミステリアス……その言い方、なんかかっこいいですね」

 希子さんが「まったく」と苦笑する。

「すぐかっこいいと浮かれるんだから。ほら、行こうか」
「はーい」

 浮かれたつもりはないのだけど……。
 私たちは休憩室に行き、弁当を広げた。希子さんが玉子焼きを食べながら、周囲に目を配る。
 私たちは隅に座ったので、近くには誰もいなかった。なにか人に聞かれたくない話でもあるのかな。
 私は希子さんが話し出すのを待った。

「ねえ」

 声を潜める希子さんにつられて、私も小声で「はい?」と答える。
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