このドクターに恋してる
 カフェの裏口に自転車を止めて中に入った。外は風が冷たかったが、室内は暖かい、

「お、来たな」

 カウンター内でコーヒーを淹れていた兄がいち早く私に気付き、手をあげる。
 洗い物をしていた母もスポンジを持った手をあげた。
 兄はトレイに三つのカップをのせ、三人が座る客席に向かっていった。
 私は店内をザッと店内を見回した。私を呼んだ美結の姿がないのを不思議に思い、母に近寄った。

「美結はどこ?」
「美久さんと帰ったわよ」
「えっ?」
 
 美結に呼ばれたから来たのに、美結がいなければ意味がない。

「私、何のために来たのよ……」
「陽菜に用があるのは、郁巳先生よ。ほら、あちらで待っているわ」
「は? 郁巳先生?」

 私はビックリして、母の視線の先を辿った。窓際のテーブル席に座る郁巳先生と目が合う。
 わっ、本当に郁巳先生がいる……。
 グリーンの薄手のニットを着ていて、黒縁の眼鏡をかけていた。一瞬別人かと思ったが、間違いなく郁巳先生だ。
 眼鏡をかけているのは初めて見たけれど、これまた、かっこいい……じゃなくて!
 どうしてここにいるのだろうか?
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