このドクターに恋してる
 私はおそるおそる郁巳先生のところまで行った。

「郁巳先生、何をしているんですか?」
「パンケーキを食べているんだけど」

 郁巳先生の前にはコーヒーとパンケーキがあり、パンケーキは半分ほど食べ終えていた。
 たしかに食べているのは、見てわかる。

「これ、美味しいね」
「はい、兄が作るパンケーキは絶品です。私も好きで……いえ、そういうことではなくて……ここにはパンケーキを食べに来たんですか?」
「いや、違う。岩見さんと話をするために来たんだ。今度また話そうと言っておきながら、連絡先を聞いてなかったから、ここに来れば呼んでもらえるかなと思ってね。とりあえず、座ったら?」
「はあ・・・」

 私は気に抜けた返事をし、ダウンジャケットを脱いで、郁巳先生の向かい側に腰を下ろした。
 兄がオーダーを聞きに来る。

「何かいる?」
「じゃあ、パンケーキとカフェラテ」
「了解。郁巳先生、ごゆっくり-」

 郁巳先生は兄に頷き、コーヒーを口に運んだ。
 母が早々とカフェラテを持ってくる。

「ごゆっくりどうぞー」
「ありがと」

 高い声を出す母に対して、私の声は低かった。
 パンケーキをカットしていた郁巳先生の動きが止まる。
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