このドクターに恋してる
 私は目を見開いた。
 
「うちって、郁巳先生の家ですか?
「うん。家といっても、俺が一人で住んでいるマンションだけど」
「あ、はい、そうだろうなとは思いましたけど……でも、あの、突然すぎて」

 ここに来たのも、私を呼び出したのも突然なことだ。
 まさか家に誘われるとは……想像を超えすぎていて、すぐに返事ができなかった。

「岩見さん、ここだと落ち着いて話ができそうにないよね?」

 私が兄と母の視線を気にしているのは、わかっていたようだ。

「たしかに、そうですけど、でも、郁巳先生のマンションに行くのは……」
「嫌だ? 俺がどんなとこに住んでいるか、興味はない?」
「いいえ! 嫌ではないですし、興味もあります」

 予想外の聞かれ方をされて、私は思わずハッキリと答えてしまった。
 郁巳先生がフッと顔を緩ませる。

「興味を持ってくれて、嬉しいよ。ご案内するね」
「ご案内……あ、はい、お願いします」

 そういうわけで、私は郁巳先生の暮らしを見にいくことになった。
 母と兄に「いってらっしゃーい」と笑顔で見送られて……。
 
 
 
 
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