このドクターに恋してる
 美結の手を握って頭を撫で続けていると、病室のドアがノックされる。入ってきたのは、宇部先生と看護師さんだった。
 わっ、宇部先生だ。こんな近くで見ることがあるなんて……やはり白衣がとてもお似合いだ。
 私は心の中で感動しつつ、美結からそっと離れる。

「美結ちゃん、どうかな? どこか痛いところ、ある?」

 宇部先生は美結の顔をのぞき込み、優しい声で話しかけた。

「て、いたい」
「注射は痛いよね。頑張っていて、偉いね。この辺りとかは痛くないかな?」

 宇部先生は自分の喉の下や胸を触って、美結に聞いた。美結は首を傾げて、「んー」と小さく唸る。

「よくわかんない」
「そうか。もし痛くなったら、ママに教えてあげてね」
「うん、わかった」

 なんだかドラマのワンシーンを見ているかのようだ。
 宇部先生、かっこいいな。

 宇部先生は曲げていた腰を起こし、美久さんに向き合った。

「なにか変わったことや困ったことがあったら、いつでも言ってくださいね」
「はい、ありがとうございます」

 頭を下げる美久さんの後ろで、私も頭を下げた。そのとき、宇部先生と目が合い、心臓がドキッと跳ねる。


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