このドクターに恋してる
 宇部先生は郁巳先生に庇われる形になった私をチラッと見て、息を吐く。

「責めてはいないよ。理由を知りたかっただけだ」
「俺と岩見さんが二人でいるのが心配なら、圭介もうちに来るか?」
「えっ? あー、行きたいのは山々だけど……これから用事があるんだよな」

 宇部先生は腕時計を見て、惜しげに言った。
 郁巳先生は宇部先生の返事にホッとしていた。

「そうか。用事に遅れたら困るだろ? 早く行けば?」
「わかってるよ。くれぐれも陽菜ちゃんが嫌がることをするなよ」
「嫌がることなんか、するわけないだろ」
「どうだかな。陽菜ちゃん、くれぐれも気をつけて。何かあったら、いつでも連絡していいからね」

 宇部先生は再度時間を確認して、私に手を振った。

「ありがとうございます。宇部先生、お気をつけて」
「ありがと! じゃあね!」

 早足で車に乗り込む宇部先生を見送り、私は郁巳先生と顔を見合わせる。

「やっとご案内できるよ。ちょうど、エレベータも来たし」
「はい、そうですね」

 エレベーターに乗り、上昇していく階の数字を眺めた。三十二階で止まり、ドアが開く。

「どうぞ、降りて」
「はい……」
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