このドクターに恋してる
 その表情がどことなく暗く見えた。
 あまり触れられたくない話題なのかもしれない。
 前に宇部先生が郁巳先生の家のことは聞かない方がいいようなことを言っていた。
 そういえば、宇部先生もこのマンションに住んでいるみたいだった。
 郁巳先生と同じ頃から住んでいるのだろうか。

「宇部先生もこちらに住んでいるんですよね?」
「圭介のことが気になる?」

 郁巳先生はカップを手にしたまま、私に鋭い視線を向けた。
 聞くことを間違えてしまった……?
 不機嫌になっているように感じ、私は肩をすくめる。
 
「さっきお会いしたから……そうなのかなと思って……あの、別に深い意味はないんですけど……」

 返事が言い訳っぽくなってしまう。
 郁巳先生は「ふうん」と私の真意を探ろうかするようにジッと見つめてきた。

「圭介は三年まえから賃貸のほうに住んでいる」
「賃貸のほう……あー、そうなんですね」

 三年前から賃貸マンションに住んでいると言われると、普通に納得できた。
 私には到底住めることのない家賃だろうけど、医師の収入なら問題なさそうだ。
 私はふむふむと勝手に納得して、コーヒーを飲んだ。

「岩見さんは……」
「はい?」
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