このドクターに恋してる
 郁巳先生は何かを言おうと口を開いたが、私の名前を出しただけで止まった。
 どうしたのかな?
 首を傾げて、話しだすのを待った。
 郁巳先生は窓の方に目を向けてから、ふたたび私を見据える。

「どういう気持ちでここに来た?」
「どういう気持ち……ですか? えっと……」

 私は天井を見上げて、郁巳先生に誘われたときのことを思い出した。

「宇部先生にも言いましたけど、郁巳先生を知りたいという気持ちですね」
「岩見さんはどういう人に対して、知りたいと思うの?」
「えっ? どういう人って、それは……謎めいている人とか好感が持てる人とか……少しでも興味を持てば、知りたいとは思います。好奇心旺盛なほうなので」
「俺のことはどんなふうに思っている?」
 
 なかなか難しい質問される。私は膝に置いた手をもじもじと動かし、答えた。

「郁巳先生にはちょっと謎な部分があるなと思っていまして……いろいろと知りたいとは思うんですけど、触れられたくないことも多いようなので」
「知りたいことって、何? 聞いてくれたら、何でも答えるよ」
「えっ? あ、そうですか……」

 何でも答えると言われても、何をどう聞いたらいいのか迷う。
 それに、自分が何を知りたかったのかハッキリとした疑問が浮かんでこなかった。
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