このドクターに恋してる
「あれ? たしか……受付の人だよね?」
「えっ、あ、はい、そうです、そうです」

 宇部先生が私のことを知っているとは思わなかった。せっかくの話せるチャンスだというのに、私は返事をするのが精一杯で、それ以上の言葉が出てこない。
 宇部先生は簡単な返事しかしない私に向かって笑みを浮かべた。

「美結ちゃんの親戚なのかな?」

 こんな私に話を振ってくれるなんて、優しい人だ。

「はい、美結の叔母です。姪がお世話になっています。美結のこと、よろしくお願いします」

 つい浮かれた私は笑顔で返すことができた。できるだけ好印象を与えたいと思う。宇部先生は「こちらこそ」と言って、美結を見た。

「美結ちゃん、叔母さんが来てくれてよかったね」
「せんせー、おばさんじゃないよ。ひなちゃんだよ」

 ええっ、美結ったらなんてことを言うの……間違えていないのに。私と美久さんは青ざめて、顔を見合わせた。おしゃべり好きな美結は大人が予想しないことを言うことがしばしばあり、いつも私たちをびっくりさせている。
 宇部先生は目を丸くしてから、眉尻を下げた、
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