このドクターに恋してる
 郁巳先生は驚かそうとしていない。私が勝手に驚いただけだ。
 郁巳先生が膝に置いた私の手を上からそっと握った。
 私は横から伸びてくる手の動きをぼんやりと眺めていて、握られた瞬間にビクッと肩を揺らす。

「今は俺のことだけを考えている?」
「もちろんです」
「岩見さんの許可を得ないで手に触れてしまったけど、不快に思?」
「不快? いえ、別にそのようなことは思っていないです」
「じゃあ、こんなふうにしても大丈夫?」

 郁巳先生は私の反応を窺いながら、指を絡めてきた。私は絡まる二つの手を凝視する。
 嫌ではないけれど、先ほどから心臓の動きが速くなっていた。
 ドキドキ、ドキドキ、ドキドキ……。

「大丈夫です……」

 俯いて答える私の声は小さかった。

「本当に?」
「はい、本当です」

 私はしっかりと郁巳先生の顔を見た。
 郁巳先生が安心したように柔らかい笑みを浮かべる。その表情がとても魅力的で、私の顔は熱くなった。
 こんな笑顔、初めて見た……やばい!

「岩見さん」
「は、はい!」
「手が熱くなってきてるし、顔が赤くなっているけど、どうして?」
「どうしてって……それは……」
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