このドクターに恋してる
 私の体温上昇の原因は郁巳先生だ。

「もしかして、俺のことを意識している?」
「意識しています。だって、こんなふうにされたら、どうしてもしちゃいます」
「それは、よかった」

 郁巳先生は嬉しそうに笑った。
 機嫌がよくなった郁巳先生は惜しげもなく、極上の笑顔を見せてくれる。笑顔は伝染するようだ。
 私も自然と笑顔を返した。

「嬉しそうにされると、私も嬉しくなってしまいます」
「岩見さん、俺と付き合ってくれない?」
「はい?」

 浮かれる私の耳に予想外の言葉が届く。
 今、交際を申し込まれた?
 聞き間違いじゃないよね?
 買い物に付き合ってほしいとかでもないよね?

「岩見さんに俺の彼女になってほしい」
「えっと、その、本気ですか?」
「もちろん。冗談でこんなことは言わないよ」
「冗談だとは一ミリも思っていません。けど、信じられなくて」
「どうしたら、信じてくれる?」
「いえ、あの、信じてないわけじゃないですよ。ただなんか、現実じゃないような、夢を見ているような、そんな気分になっていて」

 私がしどろもどろになっていると、郁巳先生は繋がっている手を自分の口もとに持っていった。
 まさか手にキスをしようと?
 私は思わずゴクリと唾を飲みこんだ。
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