おやすみ、僕の眠り姫
気持ち良さそうな寝息が聞こえる。
いつもはパジャマの感触だけど、今は素肌。
彼女のやわらかさを感じて、この上ない幸福に包まれる。
ギュッと抱きしめると、眠りながら彼女がすり寄ってきた。
「……れん……」
寝言だ。かすれ気味の、小さな声。
かすれさせてしまったことに、少しだけ罪悪感を感じる。
あの後、風呂でも寝室でも求め合った。
何度も彼女の名前を呼び、彼女も僕の名前を呼んだ。その度に、体の中が熱くなった。
初めて彼女を抱いた時にも思った。こんなにも気持ちいいことだったんだと。
相手が彼女だから感じられることなんだと、改めて思った。
この人は僕の恋人なんだと、世界中に知らしめたい。今すぐにでも。
誰にも触れさせたくない。閉じ込めて、僕以外には見せないでーーー。
って、そんな風にしたら、彼女は彼女でなくなってしまうだろう。
それは、僕の望むところではない、決して。
「ん……く……」
彼女がうめいた。
いつのまにか、大分力を込めて抱きしめてしまっていたらしい。
「れん……?」
彼女がかすかに目を開ける。
「ごめん、起こしちゃった?」
「ん……どうかしたの?」
「なんでもない。寝てていいよ」
頭をなでる。
彼女は満足そうに頷いて、また寝息を立て始めた。
この穏やかで無防備な寝顔を、いつでも見ていたい。
僕が彼女の隣で楽に息ができるように、彼女も僕の隣で安心して笑っていてほしい。
守れるだろうか、この寝顔を。あの笑顔を。
「……ふふ……」
夢でも見ているのか、彼女が笑った。
愛おしい。
頬にキスをする。
軽く、でもしっかりと抱き寄せる。
どこかへ行ってしまわないように。
「……おやすみ」
彼女の健やかな寝息に包まれながら、僕も眠りについた。