買われた花嫁は冷徹CEOに息もつけぬほど愛される

7・初めての夜に

 彼と暮らすマンションのバスルームで、実音は一人湯船に浸かって今日一日のことを思い返していた。
 実音の持ち込んだ荷物の少なさに驚いた海翔に連れ出される形で、買い物に出掛け、様々な品を揃えた後は、彼が予約しておいてくれたレストランで食事を取った。
 彼のエスコートは完璧で、成り行きで結婚しただけとは思えないほど、実音を丁重に扱ってくれた。
 その全てに感謝こそすれ、不満を抱くなんてありえないとは思うのだけど、胸の内に複雑な感情が溜まっていく。
(海翔さん、女性慣れしてる)
 彼がモテることは百も承知だし、女性との交際経験がないとも思ってはいない。
 それなのに、上司と部下といった関係でなくなった途端、彼のそういうところに、うまく説明できない苛立ちを覚えてしまうのは何故だろう。
 嫉妬……という感情とも違う気がする。
 でも本能というか、感情の深い部分で、これじゃあ駄目だと思うのだ。
 自分中に湧く感情をどう説明したらいいかわからず、実音は八つ当たり気味に湯船をかき混ぜる。
 手の動きに合わせて、大きく、小さく、波打って安定しない水面はまさに自分の心そのままだ。
「海翔さんの奥さんとして、なにを頑張ったらいいのかな?」
 しばらく湯船を眺めていた実音は、大きく息を吐くと、答えの見えない思考を置き去りにするように湯船を出た。
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