買われた花嫁は冷徹CEOに息もつけぬほど愛される
「あの……海翔さ……ん?」
海翔に手を引かれランジを出た実音は、戸惑いつつ彼の名前を口にした。
今日、彼が出勤した後で、突然帰国した兄に呼び出された。
結婚の経緯をちゃんと説明しろと怒る兄に会いに行くのは気が重たかったけど、自分の身を案じてくれているのもわかるので、なにも説明しないわけにもいかない。
実音自身、直接兄に会って、相談したいこともあった。
それで兄が泊まる予定のホテルに向かって歩いていたら牧村に遭遇し、彼女が海翔と会う約束をしていることを知った。
そして、彼女の口から、海翔の情熱的な一面を知ることができたと聞かされ、彼は心から愛せる人を見付けられたのだと理解したのだ。
もっとも牧村に再会した海翔が『俺にはお前がいた』と呟いた時から、その結果は予想していたものだが。
だから近い将来、彼から別れを切り出される覚悟をし、兄には、彼は実音が遼介にひどい仕打ちを受けている場に居合わせ、自分を見かねて同情心から結婚と有坂テクトへの支援を申し出てくれただけ。自分は彼を愛しているけど、彼には他に愛する女性がいるので、近く別れる予定であることなどを報告していた。
そんな話し合いの最中、突然息をきらした海翔が現れ、自分と別れる気はないと宣言してくれたのだ。
海翔は兄の顔を知らなかったみたいだら、もしかしたら、あの情熱的とも思える言葉は、遼介のときのように、実音が面倒なことに巻き込まれていると勘違いして、相手を威嚇するためのものだったのかもしれない。
「あの、海翔さん」
控えめな声で再度名前を呼ぶと、彼は歩みを止めて、実音をふり返った。
「話したいことがたくさんあるし、君に教えてほしいこともたくさんある」
さっきと同じような台詞を口にた海翔は、こみ上げる感情を抑えるように大きく深呼吸を一つした。そして実音と繋いでいる手に力を込めて、真摯な眼差しで告げる。
「まず一番最初に知っておいてほしいが、俺は君を愛している。君の弱みに漬け込んでズルい結婚の迫り方をした自覚はあるが、それでも君と別れたくない」
「え?」
その言葉に、実音は目を瞬かせた。
「だって……牧村さんは? 牧村さんのことを愛していて、今日も、彼女と会っていたんじゃないんですか?」
実音の言葉に、海翔は頬を引きつらせ「アイツ、どんな説明の仕方したんだ」と唸る。
心底嫌そうな彼の表情から考えて、どうやら自分は、大きな勘違いをしていたらしい。
「あの?」
おずおずと声を掛けると、海翔は海翔は繋いでいた手を離し、前髪に指を突っ込みクシャクシャと掻き乱す。
自分の脳をかき混ぜるように乱暴に指を動かしていた海翔は、なにか覚悟を決めたのか、手を下ろし実音を見やる。
「言葉にするのが下手で悪い。つまり、こういうことなんだ」
そう言って海翔は、実音を抱きしめた。
「えっ、あの海翔さん……っ!」
ここはホテルの二階ロビーで、まばらとはいえ人の姿がある。
彼の社会的地位を考えたら、誰かに見られてしまったらと焦るのだけど、海翔が気にする様子はない。
実音を強く抱きしめて言う。
「恥ずかしいくらい、君を愛している」
自分は夢でも見ているのだろうか。
信じられない思いで、顔を上げると、こちらに真摯な眼差しを向ける海翔と目が合った。
「俺の幸せを願ってくれるのなら、どうかこのままそばにいてくれ」
数ヶ月前、恋愛など幻想だと話していた人の言葉とは思えない。
彼を愛しているからこそ、幸せになってほしいと心から願っていたのだ。その幸せのために自分が必要だと言われれば、実音に拒む理由はない。
「はい」
自分からも海翔の背中に腕を回し、実音は返事をした。
海翔に手を引かれランジを出た実音は、戸惑いつつ彼の名前を口にした。
今日、彼が出勤した後で、突然帰国した兄に呼び出された。
結婚の経緯をちゃんと説明しろと怒る兄に会いに行くのは気が重たかったけど、自分の身を案じてくれているのもわかるので、なにも説明しないわけにもいかない。
実音自身、直接兄に会って、相談したいこともあった。
それで兄が泊まる予定のホテルに向かって歩いていたら牧村に遭遇し、彼女が海翔と会う約束をしていることを知った。
そして、彼女の口から、海翔の情熱的な一面を知ることができたと聞かされ、彼は心から愛せる人を見付けられたのだと理解したのだ。
もっとも牧村に再会した海翔が『俺にはお前がいた』と呟いた時から、その結果は予想していたものだが。
だから近い将来、彼から別れを切り出される覚悟をし、兄には、彼は実音が遼介にひどい仕打ちを受けている場に居合わせ、自分を見かねて同情心から結婚と有坂テクトへの支援を申し出てくれただけ。自分は彼を愛しているけど、彼には他に愛する女性がいるので、近く別れる予定であることなどを報告していた。
そんな話し合いの最中、突然息をきらした海翔が現れ、自分と別れる気はないと宣言してくれたのだ。
海翔は兄の顔を知らなかったみたいだら、もしかしたら、あの情熱的とも思える言葉は、遼介のときのように、実音が面倒なことに巻き込まれていると勘違いして、相手を威嚇するためのものだったのかもしれない。
「あの、海翔さん」
控えめな声で再度名前を呼ぶと、彼は歩みを止めて、実音をふり返った。
「話したいことがたくさんあるし、君に教えてほしいこともたくさんある」
さっきと同じような台詞を口にた海翔は、こみ上げる感情を抑えるように大きく深呼吸を一つした。そして実音と繋いでいる手に力を込めて、真摯な眼差しで告げる。
「まず一番最初に知っておいてほしいが、俺は君を愛している。君の弱みに漬け込んでズルい結婚の迫り方をした自覚はあるが、それでも君と別れたくない」
「え?」
その言葉に、実音は目を瞬かせた。
「だって……牧村さんは? 牧村さんのことを愛していて、今日も、彼女と会っていたんじゃないんですか?」
実音の言葉に、海翔は頬を引きつらせ「アイツ、どんな説明の仕方したんだ」と唸る。
心底嫌そうな彼の表情から考えて、どうやら自分は、大きな勘違いをしていたらしい。
「あの?」
おずおずと声を掛けると、海翔は海翔は繋いでいた手を離し、前髪に指を突っ込みクシャクシャと掻き乱す。
自分の脳をかき混ぜるように乱暴に指を動かしていた海翔は、なにか覚悟を決めたのか、手を下ろし実音を見やる。
「言葉にするのが下手で悪い。つまり、こういうことなんだ」
そう言って海翔は、実音を抱きしめた。
「えっ、あの海翔さん……っ!」
ここはホテルの二階ロビーで、まばらとはいえ人の姿がある。
彼の社会的地位を考えたら、誰かに見られてしまったらと焦るのだけど、海翔が気にする様子はない。
実音を強く抱きしめて言う。
「恥ずかしいくらい、君を愛している」
自分は夢でも見ているのだろうか。
信じられない思いで、顔を上げると、こちらに真摯な眼差しを向ける海翔と目が合った。
「俺の幸せを願ってくれるのなら、どうかこのままそばにいてくれ」
数ヶ月前、恋愛など幻想だと話していた人の言葉とは思えない。
彼を愛しているからこそ、幸せになってほしいと心から願っていたのだ。その幸せのために自分が必要だと言われれば、実音に拒む理由はない。
「はい」
自分からも海翔の背中に腕を回し、実音は返事をした。