買われた花嫁は冷徹CEOに息もつけぬほど愛される

11・ふたりのために

 パーティーの翌日。
 日曜日だったこともあり、実音は海翔とふたり、のんびりとした時間を過ごしていた。
 いつもより遅い時間まで、まどろみを楽しむようにベッドで過ごし、朝食と昼食を兼ねた食事を取りに、近くのカフェまで散歩がてらたふたりで歩いた。
「不思議な気分だな」
 川沿いのテラス席でコーヒーを飲む海翔が、しみじみした口調で言う。
「なにがですか?」
 食後の飲み物にココアを頼んだ実音は、カップの中で溶けかている小さなマシュマロを揺らす。
 カップを両手で包み込むようにして持つ実音の手元を覗き込みながら海翔が言う。
「実音と結婚して、まだ一ヶ月しか経ってないなんてて思えないよ。君とこうして過ごす時間が自然すぎて、もっとずと前から一緒にいた気分になる」
「確かにそうですね」
 彼の意見に、実音は嬉しそうにうなずいた。
 有坂テクトの窮状を知らされた時には、絶望的な思いで幸せな結婚なんてできるはずもないと諦めていたのに、気が付けば自分は最高に幸せな結婚をしている。
 一度は失ったと思っていた職も、彼のおかげで取り戻すことができた。
 その全ては、向かいに座り、美味しそうにコーヒーを飲む海翔のおかげなのだけど。
(だからこそ……)
「どうかしたか?」
 こちらの心を読んだようなタイミングで声をかけられて、実音は視線を手元のカップに落とした。
「いえ。幸せ過ぎて怖いと思っただけです」
 視線を落としたままそう答えて、実音はカップを持ち上げた。
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