買われた花嫁は冷徹CEOに息もつけぬほど愛される
「悪かった」
実音の勢いに押されるようにして有坂家を後にした後、タクシーを拾える場所までふたりで歩いていると、ずっと無言だった海翔がポツリと謝罪の言葉を口にした。
実音は足を止めて彼を見上げた。
「母のことは本当に知らなかったんだが、事件のことを知って、腑に落ちたことがあったんだ」
そのせいで、そちらに気を取られて、実音に辛いことを言わせてしまったと詫びる海翔は、泣いているわけじゃないけど、迷子になった子供のような頼りない表情を浮かべている。
「腑に落ちたって、なにがですか?」
実音は手を伸ばして、彼の頬を撫でた。
「当時は子供だったし、苗字が八神のままだったから、祖父母が亡くなった後で気付いたことだったんだが、何処かのタイミングで俺は戸籍上、父の戸籍から籍を抜いて、祖父母の養子とい扱いにされていたんだ」
「え?」
「それを知った時は、その方が相続や行政手続きが楽だからそうしたんだろうと思っていたんだが、祖父母は、事件のことを知っていたのかもしれないな」
祖父母を大事に思っていた海翔は、今更ながらに自分がそうやって守られていたことに気付いて驚いていたらしい。
「今頃驚いたってことは、海翔さんのおじい様とおばあ様は、海翔さんを犯罪者の子供として扱ったことがなかったんですね?」
実音のその質問に、海翔が小さくうなずく。
だからこそ、彼は今、こんなにも戸惑っているのだ。
「じゃあ、それが正解なんじゃないですか?」
「え?」
「海翔さんが信頼していたのは、自分を捨てたご両親じゃなく、おじい様とおばあ様だったんでしょ? そのお二人が、海翔さんを犯罪者の子供として扱わなかったのなら、それが正しい対応なんです」
だからこれは、自分たちも気にする必要はない。実音が微笑みかけると、海翔に強い力で抱きしめられた。
「だけど……君が俺のために、家族を捨てる必要はない」
息苦しさを覚えるほど強く実音を抱きしめて、海翔が言う。
言葉ではそんなことを言いながら、縋るように強く自分を抱きしめる彼を、手放せるはずがない。
「違います。海翔さんには、貴方は世界中の誰よりも、無償の愛を受ける権利があるんです」
実音は海翔の背中に腕を回し、彼の背中を優しく撫でた。
実音の勢いに押されるようにして有坂家を後にした後、タクシーを拾える場所までふたりで歩いていると、ずっと無言だった海翔がポツリと謝罪の言葉を口にした。
実音は足を止めて彼を見上げた。
「母のことは本当に知らなかったんだが、事件のことを知って、腑に落ちたことがあったんだ」
そのせいで、そちらに気を取られて、実音に辛いことを言わせてしまったと詫びる海翔は、泣いているわけじゃないけど、迷子になった子供のような頼りない表情を浮かべている。
「腑に落ちたって、なにがですか?」
実音は手を伸ばして、彼の頬を撫でた。
「当時は子供だったし、苗字が八神のままだったから、祖父母が亡くなった後で気付いたことだったんだが、何処かのタイミングで俺は戸籍上、父の戸籍から籍を抜いて、祖父母の養子とい扱いにされていたんだ」
「え?」
「それを知った時は、その方が相続や行政手続きが楽だからそうしたんだろうと思っていたんだが、祖父母は、事件のことを知っていたのかもしれないな」
祖父母を大事に思っていた海翔は、今更ながらに自分がそうやって守られていたことに気付いて驚いていたらしい。
「今頃驚いたってことは、海翔さんのおじい様とおばあ様は、海翔さんを犯罪者の子供として扱ったことがなかったんですね?」
実音のその質問に、海翔が小さくうなずく。
だからこそ、彼は今、こんなにも戸惑っているのだ。
「じゃあ、それが正解なんじゃないですか?」
「え?」
「海翔さんが信頼していたのは、自分を捨てたご両親じゃなく、おじい様とおばあ様だったんでしょ? そのお二人が、海翔さんを犯罪者の子供として扱わなかったのなら、それが正しい対応なんです」
だからこれは、自分たちも気にする必要はない。実音が微笑みかけると、海翔に強い力で抱きしめられた。
「だけど……君が俺のために、家族を捨てる必要はない」
息苦しさを覚えるほど強く実音を抱きしめて、海翔が言う。
言葉ではそんなことを言いながら、縋るように強く自分を抱きしめる彼を、手放せるはずがない。
「違います。海翔さんには、貴方は世界中の誰よりも、無償の愛を受ける権利があるんです」
実音は海翔の背中に腕を回し、彼の背中を優しく撫でた。