買われた花嫁は冷徹CEOに息もつけぬほど愛される
2・買われる花嫁
「有坂さん、どうかした?」
秘書室のオフィスで朝のグリーフィングを終えた実音が、CEO専用の執務室へと向かうための準備をしていると、そう声をかけられた。
見ると、営業部長の秘書を務める、仲の良い同僚の川根芽衣子がいた。
「どうかしたって、どうかしましたか?」
そう微笑んでみたのだけど、自分でもかなりぎこちない笑い方になっている自覚はある。
それでも、どうにか表情を取り繕う努力をしていると、芽衣子に親指と人差し指で頬を挟まれた。
「いふぁ」
驚いて声をあげる実音の頬を、芽衣子は無言でぷにぷにと摘まむ。
実音と同じくらいの身長の彼女は、そのまま無言でこちらの顔を覗き込んでくる。
「なんか、暗いよ。秘書室のスタッフは、スマイルも大事よ」
実音の頬の弾力を楽しむように指を動かしながら、芽衣子が「スマ〜イル、スマ〜イル」と繰り返す。
そんな芽衣子の背後を、同じCEO付き秘書である袴田と町村がクスクス笑いながら通り過ぎていくので恥ずかしい。
「川根さん、恥ずかしい」
「あ、ごめん。途中から弾力を楽しんでいた」
実音が抗議すると、芽衣子は悪戯っぽく笑って手を離してくれた。
そして少し表情を引き締めて「なにあったなら、愚痴ぐらい聞くから」と言い、軽く手を振って秘書室を出ていった。
そんなさりげない気遣いを受けてしまうくらい、今日の自分は元気がないらしい。
両手で左右の頬を持ち上げて笑顔を作り、実音は気持ちを整えると、朝の支度をすべく給湯室へと向かった。
秘書室のオフィスで朝のグリーフィングを終えた実音が、CEO専用の執務室へと向かうための準備をしていると、そう声をかけられた。
見ると、営業部長の秘書を務める、仲の良い同僚の川根芽衣子がいた。
「どうかしたって、どうかしましたか?」
そう微笑んでみたのだけど、自分でもかなりぎこちない笑い方になっている自覚はある。
それでも、どうにか表情を取り繕う努力をしていると、芽衣子に親指と人差し指で頬を挟まれた。
「いふぁ」
驚いて声をあげる実音の頬を、芽衣子は無言でぷにぷにと摘まむ。
実音と同じくらいの身長の彼女は、そのまま無言でこちらの顔を覗き込んでくる。
「なんか、暗いよ。秘書室のスタッフは、スマイルも大事よ」
実音の頬の弾力を楽しむように指を動かしながら、芽衣子が「スマ〜イル、スマ〜イル」と繰り返す。
そんな芽衣子の背後を、同じCEO付き秘書である袴田と町村がクスクス笑いながら通り過ぎていくので恥ずかしい。
「川根さん、恥ずかしい」
「あ、ごめん。途中から弾力を楽しんでいた」
実音が抗議すると、芽衣子は悪戯っぽく笑って手を離してくれた。
そして少し表情を引き締めて「なにあったなら、愚痴ぐらい聞くから」と言い、軽く手を振って秘書室を出ていった。
そんなさりげない気遣いを受けてしまうくらい、今日の自分は元気がないらしい。
両手で左右の頬を持ち上げて笑顔を作り、実音は気持ちを整えると、朝の支度をすべく給湯室へと向かった。