貧乏男子、お断り!〜玉の輿に乗りたい私は何故か、金無し貧乏イケメンに気に入られてます〜
 流石にこれは、自惚れなんかじゃないって分かる。

(でも、どうして? 今日会ったばかりなのに、何でそんな風に言えるの?)

 遠回しにだけど、私に気があると言っている三嶋さん。

 私は何て答えるべきか迷っていた。

 これから隣同士になるわけだから、ここで関係を拗らせて気まずくなりたくない。

 それならば、ここは彼の気持ちに気付かない振りを通し続けることが一番だろうと、

「も、もう、三嶋さん、褒めても何も出ませんよ? そういうこと、言われ慣れてないので反応に少し困るんですけど……そう言って貰えて嬉しいです、ありがとうございます」

 冗談混じりに言った後でお礼を口にしてからスイーツに視線を戻していった。

 多分、望んでいた展開にならなかったから、三嶋さんは戸惑っているのかもしれない。

 何も答えない三嶋さんのことは少し気になるものの、今ここで彼に視線を移してしまうと話を戻すことになりそうなのでそれはせず、

「あの、ご馳走様でした。それじゃあ私はこれで失礼しますね」

 ささっと食べ終えた私はゴミを纏めて袋に入れた後で立ち上がり、荷物を持って部屋を出ようとしたのだけど、そんな私に三嶋さんは――

「西根さん、まだ帰らないで。話、途中なんだよ?」

 言いながら腕を掴んで私の動きを制してきた。

「ちょ、三嶋さん?」
「いきなりで驚いたかもしれないけど、さっき言ったことに嘘偽りは無い。一目惚れなんだ……俺とのこと、真剣に考えてもらえないかな?」
「そ、そんなこと……言われても……」

 きっと、三嶋さんがお金持ちだって分かっていたら、喜んで受けていたと思う。

 でも、彼は違う。

 私は玉の輿に乗りたい、その思いは変わらないから、三嶋さんの気持ちに応えることは……出来ない。

「……ごめんなさい……私、三嶋さんのこと、そういう対象には、見れません」

 期待を持たせてアタックされ続けても困ると、私は彼を真っ直ぐに見つめながら、ハッキリ断った。
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