貧乏男子、お断り!〜玉の輿に乗りたい私は何故か、金無し貧乏イケメンに気に入られてます〜
「……はぁ、本当、世の中不公平だな」

 幸せそうな人を見るたびに自己嫌悪に陥り、時には自分の生きる意味を見失いそうになる。

「駄目だ、弱気になるといつもこう。私は玉の輿に乗って、こんな惨めな生活から絶対抜け出す、その為に都会に来たんだもん!」

 けれど、私には目的がある。

 それは、お金持ちと結婚して、お金の心配をせずに優雅な暮らしを手に入れること。

 その為には田舎から出て都会に来ないとと思い、大学在学中は死に物狂いで就活をして、何とか今の会社から内定を貰うことが出来た。

 そこまでは良かったのだけど、住まい探しで一気に現実を突き付けられた。

 田舎と違って都会はとにかく家賃が高い!

 職場は高層ビルが建ち並ぶオフィス街。そんなところの住まいなんて絶対無理なのでそれはまあ、分かっていた。

 だったらせめてどこか駅から近くて便利な立地で、ついでに言えば、築年数もそこそこ浅くお洒落なアパートに住めれば……なんて思って探したものの、それは私が提示した予算を遥かに上回るものばかり。

 妥協に妥協を重ね、この際築年数やお洒落さを諦め、立地を一番に取った私は、まあ結構な古めでお世辞にも綺麗とは言い難いアパートに決めた。(それでも家賃は田舎より高いけど)

 別に、実家も似たようなアパートだったから住むのは問題無いし、言ってしまえば、慣れている環境だから戸惑うことも無い。

 そもそも私がお金に拘るのは、これまでの暮らしがかなり影響していたりする。

 私の両親は私がまだ幼い頃に離婚した。

 原因は父親の不倫。

 私は母親に引き取られ、常にギリギリの暮らしを強いられた。

 それというのも、母親はかなりの浪費家で、とにかくお金の使い方が下手な人だった。

 小学校高学年でそれに気付いた私は母親を説得し、生活費の一切を私が担当。

 節約を覚えてとにかく切り詰めた。

 中学生になると母親は水商売を始め、彼氏を作って家を空けるようになった。

 生活費は貰っていたから私は私で節約をしながら気ままに暮らしていた。

 高校生になるとアルバイトを始め、とにかく貯金をした。

 そして、大学進学と共に実家を出て、母親とは疎遠になった。

 ――とまあ、親ガチャを見事に失敗した私の人生はなかなかに過酷なものだった。
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