貧乏男子、お断り!〜玉の輿に乗りたい私は何故か、金無し貧乏イケメンに気に入られてます〜
 ミルクティーベージュ色で刈り上げマッシュなヘアスタイルに、目鼻立ちが整い身長も高め、爽やかで笑顔の似合うイケメンさん。

 こんな人が隣に住むとか、すごく良いシチュエーションだなと思いつつも、挨拶を終えて廊下を歩き始めた瞬間、一気に現実に引き戻された。

(どんなにイケメンでも、こんな古くてボロいアパートに住むんじゃね……)

 見た感じ同い年くらいか少し年上っぽい印象を受けた彼。

 私と同い年なら社会人一年目だから家賃の安いアパートを借りるのも頷けるし、偏見だって分かってはいるけど、年上の社会人でこのアパートを借りてるなら正直無いなと思ってしまう。

(ま、目の保養にはいいかな、隣人がイケメンってのも)

 恋愛対象になる事は無いけれど、日々の暮らしの癒やしになるのではと期待した私は意気揚々と激安スーパーまでひたすら自転車を漕いでいった。

 その夜、スーパーで大量に食料を仕入れて来た私は作り置きの為に料理をしていた。

 平日は疲れて帰って来るので料理はしたくない。

 だから、基本土日に作り置きをして平日は楽をする。

 料理は好きな方だから苦じゃないし、家に居る間は少しでもお金を使いたくないから出来ることをする。

 こんな姿、職場の先輩たちには見せられない。

 先輩たちは住んでいるところも素敵なマンションだし、料理をする先輩のSNSを見るけど、私みたいに安い食材で作る料理とは全然違くて、レストランで見るようなキラキラした料理を作っている印象だった。

 何品か作り終えて片付けをしていると、突如インターホンが鳴り響いた。

「面倒だなぁ、誰よ、こんな時間に」

 時刻は午後七時。

 居留守を使いたいところだけど、キッチンは廊下側にあって、窓から電気が点いているのが見える以上それは無理だろうと諦めた私は片付けの手を止めて玄関へ向かう。

「どちら様ですか?」と問い掛けながら覗き穴で来客の姿をチェックしていると、

「あ、すみません、隣の三嶋です」

 そこには隣人、三嶋さんの姿があった。
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