プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
 やはりいつものパターンになったかと、少し肩を落としていると、柊仁は驚くことを言い出す。

「どこかいいホテル探しておく」

 予想外の言葉に、莉都花は戸惑いながら問いかける。

「えっ? ……いいの?」
「ギリギリだし、あんまりいいとこは取れないかもしれないけどな。それでもいいなら予約しとく」
「あ、いや、そうじゃなくて……本当に朝まで一緒にいてくれるの?」

 本当に莉都花と一晩過ごすつもりなのかと問えば、柊仁はおかしそうに笑う。

「ははっ。いいよ。りっかちゃんの誕生日なんだから、どんなリクエストも聞くに決まってるだろ」

 冗談ではなく本気で言っているのだとわかって、莉都花は驚く。

 柊仁は信じられないくらい優しい瞳で莉都花を見ていて、ああ彼もその日に進展させることを望んでいたのではないかと、莉都花はなんとなく思った。

 それならば、もう少し踏み込んでみたい。莉都花は贅沢な願いを口にしてみる。

「……それなら……それなら柊仁の家がいいな。柊仁の家で過ごしたい」

 柊仁の領域に踏み込んでもいいかという思いを込めて、その要望を告げた。

「俺の家……?」
「うん……ダメ?」

 少し考える素振りを見せる柊仁に、さすがに踏み込み過ぎただろうかと不安になる。

 不安で鼓動が速まる中、柊仁はすぐにニッと笑って、答えを返してくれた。

「いいけど。あとで汚いとかって文句言うなよ」

 あまりにもあっさりと許可が出て拍子抜けする。

 一瞬ポカンとした顔をしてしまったが、ゆっくりじわじわと受け入れてもらえた喜びが広がっていき、莉都花はその顔に笑みを浮かべた。

 少しいじわるを言う余裕まで出てくる。

「それは見てみないとわからないなー。そんなに汚いの?」
「さあ、どうだろう。俺とりっかちゃんの基準が同じかわからないし。まあ、りっかちゃんが座るスペースくらいは確保しといてやるよ」
「えー、せめて足が伸ばせるくらいの広さは欲しいな」
「しかたないな。かわいいりっかちゃんのために、今週は大掃除するか」

 大掃除はさすがに冗談だろうが、ちゃんと莉都花を迎え入れる気があるというその態度に、莉都花の胸は温かくなった。

 いつになく柔らかい空気が二人の間に流れている。

 莉都花は嬉しさを滲ませた笑みを顔いっぱいに広げて、「柊仁、ありがとう」と囁いた。
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