プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
 約束の誕生日当日。仕事を終えた莉都花は、一度家に帰ってからデートへと赴いた。

 デート用に服を着替えたかったし、宿泊用の荷物も取りに戻りたかったからだ。

 自宅を出た莉都花はいつになく緊張した面持ちになる。今日二人の関係が変わるかもしれないと思うと、どうしても落ち着かなかったのだ。

 一方、待ち合わせ場所に先に到着していた柊仁は、いつもの様子とまったく変わらない。軽口を言って、莉都花をからかい、楽しそうに笑う。

 そのいつもと変わらない柊仁のおかげだろうか。店へ向かう間に、少しずつ莉都花の緊張も薄れていった。


 二人が一緒に向かった先は、個室のある日本料理店。

 莉都花は和食がいいということだけを伝えており、店のチョイスは柊仁に任せていた。当然、個室であることも把握しておらず、店員に案内されたところで初めて気づき、驚いた。

 店の雰囲気にも、店員の雰囲気にも品があり、食事をする前から、ここがいい店なのだとわかる。

 莉都花は別の意味でまた緊張しそうになったが、個室でほかの人の目もないのだからと、余計なことは考えず、純粋に料理を楽しむことにした。

 柊仁が予約してくれていたのは湯葉懐石だ。湯葉を使った数々の料理はどれも絶品で、一口食べるごとに莉都花の表情は緩む。

 料理一つ一つに舌鼓を打つうちに、最初の緊張はすっかり消え去っていた。
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