プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
 腰に回っている腕をトントンと叩いて、起きるから放してくれと主張する。

 しかし、柊仁の腕は莉都花を放すどころか、さらに強く抱きしめてきた。耳元にちゅっというリップ音が何度も響く。

「ちょっ、柊仁」
「んー?」
「『んー』じゃなくて、起きるから放して」
「えー、まだ早いだろ。休みなんだし、ゆっくりしようよ」

 この男とベッドにいてゆっくりできたためしなんてない。起きられなくなるまで、抱きつぶされるのがおちだ。

「嘘ばっかり。絶対ゆっくりなんてできない」
「そんなことないない。まったり触れ合えばいい」

 まったり触れ合えたことなんてないだろうと、非難の目を向ければ、柊仁はにっこりと微笑んで、もう一度莉都花に軽い口づけを送ってきた。

「莉都花、好きだよ」

 俄に莉都花の頬が熱くなる。胸が疼き、勝手に艶を含んだ表情になってしまう。

 色気を含んだ声で『莉都花』と呼ばれるとダメなのだ。心も体も柊仁を求めてしまう。

 無意識に潤んだ瞳で見つめ返せば、柊仁は満足そうに微笑んでいる。

「ははっ、かーわいー。りっかちゃん、今日も最高にかわいいね。マジで好き」

 かわいらしいリップ音付きのキスが何度も降り注ぐ。愛してもらっている感覚が心地よくて、無抵抗にそのキスを受け入れる。

 しかし、腰のあたりをやわやわと触られたことで、警戒心が戻ってきた。シャツの中で怪しい動きを始める手を、莉都花はガシッとつかんで押さえ込んだ。
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